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トキワ、シュウマツドリ
創作置き場
終末



雨の日の世界は、壮大な音楽を奏でるように、息をする。
空が崩れるように、雨が降る。まるで、終末を嘆く誰かの涙のように。
少女のような歌声が聴こえるのは、きっと彼の幻聴なのだろう。何処かで聴いたことのある声だ。
らららら、ららら、ららららら。遠い昔に聴いた歌を、口ずさむ。
その口から、激しく繰り返される呼吸音が、ひゅうひゅうと鳴る。
この世界は、最後になってしまったけれど、息を呑むほどに綺麗だ。
終末は悲しいことじゃないよ。空の涙に、そう呟く。だって、終末は、美しい終わりじゃないか。
ヒトも、他のみんなも、そんな概念も無くなって、みんな溶け合って一つになって。

終末の世界は、彼の一人ぼっちになってしまった。彼は、この世界で存在し続けることができず、崩れていく。
最期に、雨上がりの虹が見れたら、はっぴーだ。
どろどろと崩れ始めた瞼と目は、もう動かない。視界も徐々に、闇へと変わっていく。
腕から下の感覚はなく、千切れて離れてしまっているらしい。体を動かすことができない。
自身の状態を確認することすら、彼にはできない。

彼は、世界の始めから、終わりまでの全てを見てきた。随分と長く生き過ぎたせいで、心に残ることが、殆ど無かった。
ただ、世界の移り変わりは迅速で、それでいて美しいこと、雨上がりの虹のことは、ぼんやりと残っていた。
それと、終末まで響きそうな少女の歌声?

そこまで考えたところで、頭が崩れ始めたようだ。思考することも、ままならない。
記憶は、永遠であり続けるから、心配はないのに、どこか切ないのだ。
いずれ、この世界の記憶は忘れ去られてしまう。
美しいものを全て覚えていたいと思うのは、傲慢なのだろうか。

やがて、彼は思考を止めて、精神だけになって、彼の体は世界に溶けていく。
世界の終わりと共に、崩れて、消えて、忘れ去られていく。生憎、虹は見れなかったが、それも一つの終末だろう。
さて、次はどんな美しい世界を創ろうかな。
何処かで聴いた歌を口ずさみながら、彼はそう思うのだ。

6回目の世界は終わりを遂げ、7回目の世界は、呼吸を始める。

次の世界では、また虹が見れるといいな。


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[2015/09/23 19:24] | 終末の話 | トラックバック(0) | コメント(0)
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