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トキワ、シュウマツドリ
創作置き場
週末、僕はデートをする。



週末、デートしませんか。
金曜日、彼は彼女にデートに誘われた。
唐突すぎて、始めは理解できなかった。想い人からの誘いなど、動揺しないわけがなかった。
殆ど話したこともない、ひたすら後ろから眺めるしかできなかった君が、何故僕を?
疑問には思ったものの、彼にとっては嬉しいことに変わりはなかった。

週末、夢かと思いながら頬をつねる。痛い。夢じゃない。
6時35分を指す時計に目を向けると、彼は寝間着を脱ぐと、Tシャツとジーパンに着替える。時間に余裕はあったが、特に迷う事はなかった。だって女子じゃあるまいし。
ご飯と味噌汁を掻き込み、ニュース番組をつける。テレビカメラは、三日前のバラバラ殺人事件の現場を映し出していた。彼は興味深そうにそれを眺めたが、暫くしてテレビを消した。現場は遠いし、彼には関係のない事なのだろう。ぼんやりとしながら携帯電話をいじっているうちに、時刻は8時半を回っていた。彼は緑色のジャンパーを羽織ると、スニーカーに履き替えて家を出た。

待ち合わせの駅前の噴水。彼は三十分前には着いたけど、時間通りに来た彼女には「今来たところだよ」と言った。言ってみたかったんだ、これ。
そう言われて、彼女は安心したように微笑んだ。柔らかい笑みだ。薄いピンクのカーディガンがよく似合っている。その下のシャツから覗く白い肌は、思わず見惚れてしまいそうだ。
じゃあ、行こうか。彼は、彼女の手を握った。

彼は、色々な店を巡った。アクセサリーショップ、ぬいぐるみ屋、喫茶店。雑貨屋では、二人でお揃いの缶バッチを買った。絵柄は少しグロテスクで、学校の鞄には付けられないだろう。彼女は、スプラッターなものが好きだった。

時が流れるのは早く、気がつけば街はオレンジ色に染められていた。誰もいない駅前の商店街を、二人で歩く。
ビルの屋上にある観覧車。受付に人はいなかったけれど、彼女が乗りたがるので、彼は代金を置いて中へと入って行った。
観覧車は、昇っていく。やがて、ビルの影からそれは顔を出し、ゴンドラはオレンジ色の光に包まれた。彼女が微笑む。とても、幸せだった。この時が、一生続けばいいと思った。
この世界に僕と君以外は、いらないと思った。
いや、本当は既にこの世界には、君と僕以外はいなかった。彼女は、悲しげに微笑んでいた。一筋、雫はオレンジ色に照らされて輝いた。
彼女の顔が、腕が、体が、まるで鱗のように剥がれていく。ゴンドラは、いつの間にかなくなっていた。剥がれた鱗は空へ舞って、きらきらと輝いて綺麗だ。やがてそれは、肉とカルシウムの塊になって、分解され、星屑のようになって空へ昇る。彼女が握りしめていた缶バッチは、重力に逆らえず落ちていく。彼の体も、落ちていく。

彼はこの上なく、幸せだった。この世界に生まれ、そして生きてきた中で、最高の週末だった。
終末、隣には彼女が居たのだから。

堕ちてゆく彼は、段々朦朧になっていく意識の中、次に会える彼女を想像した。



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[2015/07/19 20:04] | 小話 | トラックバック(0) | コメント(0)
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