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トキワ、シュウマツドリ
創作置き場
最終破壊兵器・EVE


澄んだ空、満月。水晶のようです。要塞の最上部に佇む、月光を反射して輝く鉄塊。趣深いですね、と信号は正常な反応を示す。
最終破壊兵器・EVE068。一度起動すれば、三夜で世界を滅ぼす。三日三晩で大地を焼き尽くし、空を堕とす。ヒトの形をした、滅亡のスイッチ。「彼女」は、自身を「人間」だと主張する。
だって、この鉄の肌の下に張り巡らされた電子回路は、血管のように脈打っているもの!搭載された人工知能は、複雑な思考を可能にしているもの!大陸を一つ吹き飛ばした失敗作ーー「ADAM」に欠落していた「感情」だって、私には搭載されているもの!
喜び、悲しみ、怒る。どこをどう見たって、人間以外の何者でもないでしょう!けれども、ね。博士は私をヒトでないと言うのよ。
彼女は怒る。正常な反応だ。頑なにヒトと認めたがらない意地悪な老人は、軽蔑するような目で彼女を見る。
確かに、肌は鉄だし、所々尖っているし、普通の女の子のように可愛いわけでもないけれど……でも、見た目なんて関係ないのよ。彼女は悲しい。正常な反応を示す。

ラピスラズリのテーブルに、ダイアモンドをばら撒いたような空です。けたたましい電子音が、要塞の最上部に鳴り響く。内蔵された時計は、残り一分のカウントダウンを始める。
静まり返った空間で、彼女は全身に月光を浴びて輝く。きっと、私の人生の中で今が一番輝いているんでしょうね。
あと三十秒で、全てが終わり、全てが始まる。私は新しい私になり、新しい人生が始まる。少し、怖い。正常な反応を示す。
残り十秒を刻む。その時。

ああ、私はやっと、今、ヒトになったわ。
この鉄塊は、今、本当の、人間になったのよ!

それは、流星のような一瞬。視界の端に映るのは、少年、そして銃口。ジルコンの瞳が、後ろの月光を受けて煌めいた。
電子回路が激しく脈動する。「error」。初めての表記。人工知能が思考を拒む。それを突破して、辿り着いたその先の感情は何?
この胸のときめきは、何?

鉄塊は、「プログラムされた可能性」を超えた。それは、鉄塊が人間になった瞬間であり、彼女の人生の終わり。
ゼロ秒が刻まれ、全身の電子回路の信号が彼女の心臓へと達する、その前に、それは彼女の心臓をーー心を貫いた。

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テーマ:自作小説(ファンタジー) - ジャンル:小説・文学

[2016/11/20 21:43] | 小話 | トラックバック(0) | コメント(0)
晴天の下の処刑台
好き。
目を見開いて、声も出ぬほどに恐れ慄いている。貴方が好きだ。
僕は多分、人生最高に幸せな笑みを浮かべているだろう。身体が弾け飛びそうに、幸せな気分だ。
この腕には、首には、身体には、貴方に捧げた傷跡が、まだ生々しく残っているだろう。どれもこれも、軽々しく思い出と呼べない、宝物だ。
「貴方は僕のことが嫌いだね。言わないでもわかるよ?だってそんなにも、嫌悪を僕に向けて」
貴方は何も言わない。ただ呆然と僕を見て、何が起こるのかを理解できずにいる。
貴方は優しいから、誰にでもそうなのだ。本当は内心、僕のことを気味悪がっているのだ。僕には分かる。
僕はこんなにも好きなのに。貴方は馬鹿げてる。この愛に、対価も払わないで、僕には嫌悪しかくれやしない。
悪いのは貴方だ。貴方は悪で、この世の全てから嫌悪されるべき存在なのだ。
それなのに、何も知らないような顔をする!
「今更止めてももう遅いよ?貴方は罪を犯したんだから。今から償ったところで、もう手遅れなんだ」
僕は今から、貴方を処刑する。処刑とは言え、死ではない。死よりももっと苦痛で、屈辱的で、恒久的な痛みだ。
きっと貴方は、その光景を忘れないだろう。貴方の心に一生残って、人生を支配するだろう。
貴方は自分を責めるだろうし、きっと自分を恨むだろう。
貴方はもう僕を忘れられないし、忘れるなんて許されない。僕は一生貴方を縛り続けるし、貴方は一生その罪をその身に宿して、そして死を迎える。
後悔は、懺悔は、神には届かないのだ!貴方を赦す神など、いないのだ!
軽快なメロディは、神聖な儀式に相応しい、賛美歌のよう。騒めきは、僕らを祝福しているよう。
大きく息を吸い込む。そろそろ、運命の時は近づいてくる。
嗚呼、相変わらず貴方は可愛い。吐き気がするほど、僕は貴方が好きだ。
とびっきりの笑顔で、安らかな微笑みで、僕は貴方を処刑する。
「さようなら、憎くて、恨めしくて、大嫌いな貴方。愛していましたよ」
時速110キロの鉄塊に、僕という人間は、簡単にただの肉の塊になる。
貴方が理解したように、僕に手を伸ばしたその顔が、びっくりするほど愛らしくて、僕の意識は幸福で弾け飛んだ。
[2016/05/22 18:33] | 小話 | トラックバック(0) | コメント(0)
首を絞められたい


首を絞められている。
絞められているのを見るのが好きだ。独占欲と言う名のもとで、少女の細い首を締め付ける、それが好きだ。
少女から漏れる、途切れ途切れの声と嗚咽が好きだ。そんな少女に対する興奮から漏れる、荒い息遣いが好きだ。
少女の、恐怖と怯えで見開かれた目が好きだ。少女に注がれる、嗜虐心に満ちた眼差しが好きだ。
絞められているのを、見るのは好きだ。
絞められている少女を、自分に置き換えてみるのはもっと好きだ。
絞められたいのだ。
その細くて、柔らかな手で、絞められたいのだ。そのしなやかな指からは想像もできない強さで、絞められたいのだ。
毎日、首についた赤黒い痕を、毎朝鏡の前で眺めたいのだ。独占欲と嗜虐心に塗れた視線で、見つめて欲しいのだ。
そう、想うのは簡単だった。だが、現実は悲しいことに、彼女は首を絞められはしない。
絞められて喜ぶ者を、絞めたいとは思わない。彼女は知っていた。それでも、絞められたいと思った。
絞めて、絞めて、呼吸もできない程に絞めて、痕が残るくらいに絞めて、殺して欲しい。掠れた声を上げ、目に涙を浮かべ、独占欲の中で逝きたい。そう思うわけである。
彼女ははじめ、自分に嘘をついた。首を絞めるのを見るのが好き。そう思っていたかった。首を絞められているのが自分だったなら、どんなに良かっただろうか。
絞められている少女は、独占欲の対象。どんなに焦がれても、その場所を代わってもらうことは出来ない。どんなに懇願しても、その嗜虐心に塗れた視線を分けてはもらえない。
羨望。嫉妬。そして、僅かばかりの興奮しか、彼女には残らない。
首を絞められたい。
そう、彼女は想い続けている。

[2015/08/11 14:08] | 小話 | トラックバック(0) | コメント(0)
週末、僕はデートをする。



週末、デートしませんか。
金曜日、彼は彼女にデートに誘われた。
唐突すぎて、始めは理解できなかった。想い人からの誘いなど、動揺しないわけがなかった。
殆ど話したこともない、ひたすら後ろから眺めるしかできなかった君が、何故僕を?
疑問には思ったものの、彼にとっては嬉しいことに変わりはなかった。

週末、夢かと思いながら頬をつねる。痛い。夢じゃない。
6時35分を指す時計に目を向けると、彼は寝間着を脱ぐと、Tシャツとジーパンに着替える。時間に余裕はあったが、特に迷う事はなかった。だって女子じゃあるまいし。
ご飯と味噌汁を掻き込み、ニュース番組をつける。テレビカメラは、三日前のバラバラ殺人事件の現場を映し出していた。彼は興味深そうにそれを眺めたが、暫くしてテレビを消した。現場は遠いし、彼には関係のない事なのだろう。ぼんやりとしながら携帯電話をいじっているうちに、時刻は8時半を回っていた。彼は緑色のジャンパーを羽織ると、スニーカーに履き替えて家を出た。

待ち合わせの駅前の噴水。彼は三十分前には着いたけど、時間通りに来た彼女には「今来たところだよ」と言った。言ってみたかったんだ、これ。
そう言われて、彼女は安心したように微笑んだ。柔らかい笑みだ。薄いピンクのカーディガンがよく似合っている。その下のシャツから覗く白い肌は、思わず見惚れてしまいそうだ。
じゃあ、行こうか。彼は、彼女の手を握った。

彼は、色々な店を巡った。アクセサリーショップ、ぬいぐるみ屋、喫茶店。雑貨屋では、二人でお揃いの缶バッチを買った。絵柄は少しグロテスクで、学校の鞄には付けられないだろう。彼女は、スプラッターなものが好きだった。

時が流れるのは早く、気がつけば街はオレンジ色に染められていた。誰もいない駅前の商店街を、二人で歩く。
ビルの屋上にある観覧車。受付に人はいなかったけれど、彼女が乗りたがるので、彼は代金を置いて中へと入って行った。
観覧車は、昇っていく。やがて、ビルの影からそれは顔を出し、ゴンドラはオレンジ色の光に包まれた。彼女が微笑む。とても、幸せだった。この時が、一生続けばいいと思った。
この世界に僕と君以外は、いらないと思った。
いや、本当は既にこの世界には、君と僕以外はいなかった。彼女は、悲しげに微笑んでいた。一筋、雫はオレンジ色に照らされて輝いた。
彼女の顔が、腕が、体が、まるで鱗のように剥がれていく。ゴンドラは、いつの間にかなくなっていた。剥がれた鱗は空へ舞って、きらきらと輝いて綺麗だ。やがてそれは、肉とカルシウムの塊になって、分解され、星屑のようになって空へ昇る。彼女が握りしめていた缶バッチは、重力に逆らえず落ちていく。彼の体も、落ちていく。

彼はこの上なく、幸せだった。この世界に生まれ、そして生きてきた中で、最高の週末だった。
終末、隣には彼女が居たのだから。

堕ちてゆく彼は、段々朦朧になっていく意識の中、次に会える彼女を想像した。



[2015/07/19 20:04] | 小話 | トラックバック(0) | コメント(0)
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